保険は「いざ」という時の安心のために入るもの。でも、請求の段階で「これは免責事由に当たるため支払えません」「この疾病は不担保です」と言われて戸惑う人は少なくありません。モヤっとしやすいこの領域を、読者の疑問に寄り添いつつ、実務で役立つレベルまで一気に深掘りします。途中にチェックリストや図表も挟み、「約款をどう読むか」「どこが誤解の落とし穴か」が自分で見抜けるようになることを目指します。
なぜ誤解が起きるのかと、この記事で解決できること
保険の「免責事由」「不担保事由」は言葉が似ていて、しかも商品ごとに細部が違います。約款はボリュームが多く、読み飛ばしがちな「お支払いできない場合」に核心が書かれていることも。さらに、営業トークやネットの断片情報が混ざると、誤解が生まれやすい構造です。
- この記事のゴール:
誤解10選を例示しながら「正しい理解→実務上の注意点→チェックポイント」を体系化。自分の契約でどこが対象外かを能動的に把握できる状態にします。 - 読了メリット:
- トラブル回避: 請求前から支払可否の見立て精度が上がる
- コスパ改善: 必要な特約・併用保険の判断がブレなくなる
- 不安の低減: 約款の「怖く見える」表現を冷静に読み解ける
読み進める前に自分の保険証券・契約内容控え(特約一覧)を手元に用意すると、理解がグッと深まります。
免責事由と不担保事由の要点整理
まずは土台を揃えます。似て非なる二つの概念を、定義・典型例・実務での見分け方で掴みましょう。
定義と違い
- 免責事由(めんせきじゆう):
定義: 事故・事象が起きても「その事由に該当する場合は支払わない」とする除外条件。
典型例: 故意、重大な過失、闘争行為、無免許運転、飲酒運転、戦争・内乱、地震・噴火・津波(火災保険の基本補償では免責)など。
位置づけ: 事故の“性質”や“背景事情”が支払の可否を左右。 - 不担保事由(ふたんぽじゆう):
定義: 契約の開始時点から「補償対象外」とされる状態・部位・疾病等。
典型例: 始期前発病(契約前から患っていた病気)、特定部位不担保、妊娠・出産(医療保険の基本で対象外のことがある)など。
位置づけ: “元々の対象外”で、事故の有無以前にカバー外。
一目でわかる対比
| 観点 | 免責事由 | 不担保事由 |
|---|---|---|
| 性質 | 「起きた事故の事情」による除外 | 「契約時点からの対象外」 |
| 主な例 | 故意・重大過失、戦争、地震(基本補償) | 既往症、特定部位、妊娠・出産 |
| 文書上の場所 | お支払いできない場合(免責条項) | 契約条件・告知結果の条件付き承諾 |
| 変更可能性 | 原則不可(商品・約款に依存) | 原則不可(見直し・再加入で対応) |
| 典型対応 | 特約や別契約でカバー | 条件解除は原則困難、商品選定で回避 |
Sources: 金融庁「保険のしくみと注意点」や各社約款の「お支払いできない場合」ページは総論の理解に有用です。
- 金融庁 保険商品ガイド:https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance/
- 生命保険協会 生命保険の基礎知識:https://www.seiho.or.jp/knowledge/
よくある誤解10選(誤解→正しい理解→実務ポイント)
誤解1:免責事由は「すべてのケース」で適用される
- 誤解の内容:
「免責って書いてあれば基本全部ダメでしょ?」 - 正しい理解:
限定列挙が基本。 約款には具体的に「支払わない場合」が列記されており、該当しなければ支払対象です。たとえば火災保険で「地震による火災」は免責ですが、落雷や風災は基本補償範囲に含まれるなど、事由ごとの線引きが明確。 - 実務の注意点:
- 条文の確認: 「お支払いできない場合」を全文通読。用語定義もセットで読む
- 特約の有無: 地震保険や破損・汚損特約などで免責領域をカバーできる場合あり
- 請求前相談: 事実関係の整理(時刻、場所、原因)を時系列で用意
参考: 東京海上日動 火災保険の補償概要(地震保険の必要性)
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/product/home/earthquake/
誤解2:不担保事由は「免責事由」と同じ意味
- 誤解の内容:
「結局どっちも保険金が出ないなら同じでしょ?」 - 正しい理解:
出ない“理由”が違う。 不担保は「最初から対象外」、免責は「起きた事故が特定事情に該当」。医療保険では「契約前からの腰椎ヘルニア」が不担保だと、その部位関連の入院・手術は期間を問わず対象外になり得ます。 - 実務の注意点:
- 告知結果の書面: 条件付き承諾(特定部位不担保)などは「通知書」を保管
- 代替策: 特定部位不担保でも他社の商品設計でカバーできる場合あり(支払事例の傾向が異なる)
- 見直しタイミング: 病状が安定後に再告知で条件緩和できる可能性は商品・社内基準次第
参考: 生命保険協会「告知義務とその重要性」
https://www.seiho.or.jp/knowledge/joining/
誤解3:契約前に病気を申告していれば安心
- 誤解の内容:
「ちゃんと正直に告知したから、その病気も補償されるはず」 - 正しい理解:
告知は“安心の必要条件”であって“充分条件”ではない。 告知後、保険会社はリスクに応じ「引受不可」「条件付き承諾(不担保付)」などを判断します。正直な告知は告知義務違反の回避に必須ですが、既往症自体の補償可否とは別次元。 - 実務の注意点:
- 診断書・通院歴: 告知内容は医療記録と整合性があることが重要
- 条件付き承諾の読み方: 不担保範囲(部位・疾病名・期間)を明確化
- 比較検討: ワイドな引受基準を持つ商品(引受基準緩和型)も検討
参考: 金融庁「告知義務違反と影響」
https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance/consumer.html
誤解4:免責期間が終わればすべて補償される
- 誤解の内容:
「一定期間経過すれば既往症も自動的にカバーされるんでしょ?」 - 正しい理解:
免責期間と不担保は別物。 たとえば妊娠・出産は「待機期間(免責期間)」が設定される商品があり、期間経過で支払対象になるケースもあります。一方で既往症による「特定部位不担保」は期間と無関係に対象外が続くのが原則。 - 実務の注意点:
- 用語の確認: 待機期間・免責期間・削減支払期間などの違い
- 特約の影響: 合併症や新たな疾病に該当するかの判断は支払事例基準に依拠
- 医師の意見書: 病状固定・寛解の証明が再引受時に意味を持つことあり
参考: 各社医療保険約款(妊娠出産の待機期間の扱い)例示ページ
住友生命 医療保険の基礎知識:https://www.sumitomolife.co.jp/
誤解5:小さな過失なら免責にならない
- 誤解の内容:
「重大な過失じゃなければ大丈夫だよね?」 - 正しい理解:
過失の程度と因果関係がポイント。 自動車保険や傷害保険では、飲酒・無免許など明確な免責はもちろん、危険行為と事故の因果が強いと免責が争点になることがあります。軽微でも「危険の増加」が見られると評価が変わる場合も。 - 実務の注意点:
- 事実関係の記録: 当時の状況、速度、環境要因を客観的に記録
- 第三者証拠: ドラレコ、警察事故証明、目撃者供述
- 約款の文言: 「重大な過失」の定義・例示を熟読
参考: 自動車保険の免責に関する一般解説(損保協会)
https://www.sonpo.or.jp/
誤解6:自然災害はすべて補償される
- 誤解の内容:
「火災保険に入っていれば地震の火災も当然カバーだよね?」 - 正しい理解:
地震・噴火・津波は原則免責。 日本では地震保険が火災保険に付帯する形で提供され、地震由来の損害は地震保険で補償する仕組みです。地震に伴う火災や損壊は、地震保険未加入だと対象外となるのが基本。 - 実務の注意点:
- 地震保険付帯の有無: 保険証券で付帯状況と保険金額を確認
- 建物・家財の区分: どちらに付帯しているかで支払上限が違う
- 特約の併用: 破損・汚損、風災・水災の範囲を別途確認
参考: 日本地震保険(損害保険料率算出機構)
https://www.giroj.or.jp/seismic/
誤解7:海外での事故も国内と同じ条件で補償される
- 誤解の内容:
「日本の医療保険で海外入院も同じように支払われるはず」 - 正しい理解:
支払対象・算定基準・通貨換算など制限が多い。 海外治療費用は「渡航目的」「治療の必要性」「現地医療水準と費用」などの要件が絡みます。国内保険で海外治療を想定していない商品もあり、旅行保険の併用が実務的には安全。 - 実務の注意点:
- 補償範囲: 海外医療費、救援者費用、携行品損害の有無
- 対象国: 渡航制限国、戦争危険地域は免責の可能性
- 連絡体制: 事前連絡義務がある商品も
参考: 外務省 海外安全情報と旅行保険の必要性
https://www.anzen.mofa.go.jp/
誤解8:免責事由は保険会社ごとに同じ
- 誤解の内容:
「約款はどこも似たようなものだし、細かい違いはないでしょ」 - 正しい理解:
骨格は似ても、細部は異なる。 「定義」「例外」「特約の効き方」「支払限度」などの文言差で結論が変わることがあります。同じ“がん保険”でも、上皮内新生物の扱い、免責期間、通院支払の要件に差が出ることは珍しくありません。 - 実務の注意点:
- 比較の軸: 支払事由の定義、免責・不担保条項、特約有無、支払事例
- 納得の検証: 想定事例を3つ作って各社に当てはめてみる
- 販売チャネル: 乗合代理店か単社かで選択肢が変わる
参考: 生命保険協会「商品比較のポイント」
https://www.seiho.or.jp/knowledge/choice/
誤解9:免責条項は消費者契約法で無効化できる
- 誤解の内容:
「消費者に不利な条項は法律でひっくり返せるんだよね?」 - 正しい理解:
保険の本質に関わる除外は原則有効。 消費者契約法は不当な条項を規制しますが、保険は「どこまでをリスク移転するか」を約款で定義する契約。合理的なリスクの線引き(免責・不担保)は契約成立の前提として有効です。ただし、説明不足や誤認を誘う表示は問題になり得ます。 - 実務の注意点:
- 重要事項説明: 説明書面・パンフレットの記載と口頭説明の整合
- 質問記録: 募集時の質疑応答をメモしておく
- 相談窓口: 紛争解決機関(ADR)の存在を把握
参考: 消費者契約法(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/
誤解10:困ったら後から変更できる
- 誤解の内容:
「契約後でも事情を話せば不担保を外してもらえるでしょ?」 - 正しい理解:
契約後の免責・不担保は原則固定。 変更は「再告知のうえ再引受」「商品切替(増減額や再加入)」「保険期間満了後の再契約」などで対応するのが一般的。“お願い”で条項が変わることはありません。 - 実務の注意点:
- 再告知の準備: 経過観察の期間、再発リスク、医師所見
- 商品選定: 緩和型・部位別設計・定期/終身のバランス
- 時期: 更新前後・増額前後は審査基準が動く可能性
参考: 各社の引受基準緩和型医療保険の商品概要(例)
アフラック 緩和型医療保険:https://www.aflac.co.jp/
実務で使える「約款の読み方」チェックリスト
約款は“地図”。この順で読むと迷いにくいです。
- 目的と定義:
- 目的: どのリスクを対象にした商品か
- 定義: 主要用語(事故、疾病、入院、手術、通院、待機期間)
- 支払事由と除外:
- 支払事由: 何が起きたら支払われるか(条件と例外)
- 免責事由: 支払わない事由の列挙と例外条件
- 不担保の確認:
- 告知結果: 条件付き承諾の通知内容(部位・疾病・期間)
- 初期不担保: 契約共通で対象外の領域(妊娠・歯科等の扱い)
- 特約と上限:
- 特約: 付帯の有無(通院、先進医療、地震保険など)
- 上限: 支払限度日数、回数、金額
- 請求プロセス:
- 必要書類: 診断書、事故証明、領収書
- 連絡義務: 事前連絡・指定医療機関などの要件
役立つ一般情報:金融庁・生命保険協会の基礎ガイドは最初の“地図合わせ”に最適です。
https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance/
https://www.seiho.or.jp/knowledge/
具体事例で理解を固める(ミニケーススタディ)
ケースA:地震後の火災(持ち家・火災保険のみ加入)
- 事実: 地震直後に近隣火災が延焼し自宅が焼損
- 判断ポイント: 火災保険の免責条項(地震由来の損害)
- 結論の目安: 地震保険未加入だと「地震に伴う火災」は免責の可能性が高い
- 対策: 地震保険の付帯、家財にも付帯、保険金額の妥当性見直し
ケースB:既往症(腰椎ヘルニア)と新規医療保険
- 事実: 告知済み、条件付き承諾(腰部・脊椎不担保)で契約
- 判断ポイント: 不担保範囲(手術・入院の対象部位)
- 結論の目安: 腰部由来の入院・手術は対象外。ただし別原因の骨折等は対象
- 対策: 緩和型商品との併用、貯蓄・共済の活用
ケースC:海外旅行中の救急搬送
- 事実: 現地で食中毒により入院
- 判断ポイント: 海外治療の取り扱い、事前連絡義務
- 結論の目安: 国内医療保険単独では不十分な可能性。旅行保険なら救援者費用もカバー
- 対策: 渡航前の付帯確認、キャッシュレス診療対応の有無
読者の疑問にまとめて答えるQ&A
- 質問: 不担保に指定された部位は永久に対象外ですか?
回答: 原則として契約期間中は対象外。再告知により新規契約で条件が変わる可能性はありますが、現契約の条項が自動解除されるわけではありません。 - 質問: 免責事由に該当するか微妙なケースはどう扱われますか?
回答: 事実関係と因果関係の立証が鍵です。診療録、事故証明、写真・動画など客観資料を揃え、保険会社の支払査定に必要十分な情報提供を行いましょう。 - 質問: 地震保険は絶対に必要ですか?
回答: 地震由来の損害を火災保険は基本免責とするため、住宅保有者は付帯が合理的です。家計と地域リスク(耐震性能、地域の地震確率)も踏まえて検討が妥当。 - 質問: 告知義務違反になるとどうなりますか?
回答: 解除や不払いの対象になり得ます。意図的でなくても、重要事項の不告知は重大な影響。迷ったら「余計かな?」と思う情報も含めて相談を。
この記事の結論と、次にやるべき3ステップ
結論はシンプルです。「免責=事故の事情による除外」「不担保=最初から対象外」。誤解はこの線引きの曖昧さから生まれます。だからこそ、約款の“除外の地図”を先に把握し、特約や併用で穴を埋める発想が重要です。
- ステップ1(棚卸し):
証券チェック: 付帯特約・地震保険・支払限度を確認。条件付き承諾の通知書も再確認。 - ステップ2(弱点把握):
穴の特定: 不担保部位・免責事由をリスト化。想定事例を当てはめる。 - ステップ3(対策):
補完策: 特約追加・商品入替・他社比較・貯蓄とのバランス調整。
参考リンク(総論の理解と比較の起点に)
- 金融庁 保険の基礎情報:https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance/
- 生命保険協会 基礎知識:https://www.seiho.or.jp/knowledge/
- 日本地震保険:https://www.giroj.or.jp/seismic/
- 消費者庁 消費者契約法:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/
情報提供としての無料相談のご案内
もし「自分の契約だと具体的にどこが穴になる?」「不担保の条件を踏まえた最適解は?」と感じたら、第三者視点の専門家に一度聞いてみるのも有益です。複数社を横断的に比較できるため、「免責・不担保の穴」を特約や商品選定でどう埋めるかの設計がしやすくなります。
- 無料相談サービス(情報提供):
みんなの生命保険アドバイザー(無料) - 相談前に準備したいもの:
- 証券一式: 商品名、特約、保険金額、更新・終期
- 告知関連: 条件付き承諾の通知、既往症の診療記録
- 希望条件: 月額保険料の上限、優先したい保障領域(入院・がん・死亡・就業不能)
露骨な勧誘ではなく、あくまで選択肢の一つとして「第三者の目で設計を点検する」ための窓口です。必要性を感じたタイミングで活用してみてください。
補足ヒント(ブックマーク推奨)
- 約款の“お支払いできない場合”は最初に読む: 支払事由より先に除外の地図を把握する
- 「似てる用語」を並べて比較する: 免責期間/待機期間、不担保/免責、上皮内新生物/がん
- 想定事例を3つ用意して、商品を当てはめる: 自分の生活に即した事例で比較するとブレない
誤解しやすい領域だからこそ、落ち着いて一つずつ線引きを確認すれば、保険はもっと“使える道具”になります。


コメント